あたらしい仕入先との商談はこんなやりとりで始まります。
「服地を探しています」
「どんな服地ですか?」
「はい、ソーイング用の服地です」
「ソーイング用?」
「はい、じぶんでつくる用の。。。」
「あぁ、オーダーを受けて製品をつくる生地ですか?」
「いえ、お客さんがじぶんでつくるんです」
「あぁ、じゃあ、こういうのでしょうか。。。」
と、出して頂くサンプルには2つのパターンあります。
パターンA)高級なインポート服地
パターンB)服にするには向かない風合いの服地
前者はふつうのひとが縫うのにはむずかしい、オーダー服用の布地。
後者はプロのひとがつくっても、きれいに仕上げるのがむずかしい布地です。
仕入であれば、後者は激安・超特価で大量に流通していますから簡単です。
なかには僕たちが今、取り扱っている布地に「似たもの」もありますが
あくまで「安くたくさん売るために、似せてつくられたもの」で
独特のチープさがあって仕入れられません。(ごめんなさい)
残念ながら、どちらも僕たちが欲しい服地ではありません。
「手作りしたと思われたら負け」というソーイング格言が
あるかどうかは知りませんが
「服にするには向かない風合いの服地」 でつくってしまうと
どんなに上手くできても「手作り感」が出てしまいます。
スタジオに「ミシンを買って、何着かつくっただけで。。。」
という方が時々いらっしゃいます。
作例をご覧になって「こんなのつくれるんですねぇ」「こんな布地あるんですねぇ」と
喜々とされるお客様とお話しするたびに思うのは
その方がつくらなくなったのは「面倒だから」「むずかしいから」という表層的な理由ではなく
「手作り感が出てしまう布地でつくってしまったから」ではないかと 。。。
せっかく服をつくるんですから
「どこで買ったの?」って、言われるような服を
つくってもらいたいです。
そういう想いがある一方、僕たちが取り扱いたい
「日本の産地でていねいにつくられた」「良質な」
「じぶんで服をつくるための服地」は
最近、極端に少なくなったと仕入先の方もお嘆きでした。
現在、オンラインストアの布地で「○○製」と表記していないものはすべて国産品です。
(全体の1割はイタリア、フランスなど欧州産の凝ったデザインのものがあります)
もちろん、日本の産地を応援したいという想いもありますが
現状、品質にこだわれば「国産品が圧倒的に優れているから」、というのが国産にこだわる理由です。
そういう意味では品質がいいものであれば
どこの国でつくられていようといいものはご紹介していきます。
そして、品質の高い「MADE IN JAPAN」の布地は
海外に売っていくべきものだと思っています。
たしかに、情報も資金も潤沢ではない私たちが仕入れられる布地を探すのは大変です。
さらに、「似て非なるもの」の価値をインターネットでお伝えして
買って頂くのは簡単ではありませんが
「すてきな布が届きました。ありがとう」のメッセージを頂くと
よし、また頑張って仕入れようと!なります。(単純です)
先週の布旅では、「これ売れてますよ」という布地に興味を示さない
変わり者の僕たちを意気に感じて頂いたのか
仕入先様のお取り計らいで
ふつうだったら絶対にお取引できない大きなメーカーさんからも
仕入ができるようにして頂けました。 (僕たちは1番小さな取引先だそうです・笑)
今日はずいぶん大きな話になりましたが、僕たちはそんなことを考えて仕入れをしています。
オンラインストアにすこしですが、じぶんで服をつくるための「服地」を追加しました。