この織り、この柄は正式にはなんて名前だろう?
WEBで調べてみると、同じ事柄の説明でも微妙にニュアンスが違っていたり
ときには正反対のことが書かれていることさえあります。
時代とともに、呼び方が変わったりすることは珍しくないので
しかたがないところもあります。
が、僕たちは布屋さんなので、あたりまえですが
自分たちが販売している布地の名称は正確に
つけなければなりません。
メーカーさんでは、結構ざっくり、「ツイル」(綾織り)だけで終わっていることの方が多いのですが
「ツイル」といっても、チノクロス、ギャバジン、サージ等々あるので、「ツイルの中のどの織りなのか?」
自分たちで特徴を納得いくまで調べて、名称をつけています。
なぜ、ツイルをツイルのまま販売してはいけないか?
チノクロスとギャバジンは見た目は似ていますが、単純に「別物だから」です。
使われている糸も違えば、織りの組織も違うので
つくるものの向き不向きも違います。
それを「ツイル」で済ませてしまうのは乱暴です。
そんなこんなで、布地に関する本はいろいろ買いました。
学術研究よりのものから、写真にひとりごと的なキャプションがついたエッセイまで。
そのなかで、僕がバイブルとしているのが「テキスタイル用語辞典」です。
「用語辞典」としては、簡潔明瞭で、おそらくベスト。
特に、カラー写真は原寸大で裁ち目の質感まで伝わる、地味だけどアイデアがつまったものです。
ニットは裏の編み地の写真まで掲載されていたり
柄もここまで細かく分類されているものは他にないと思います。
今までいろんな本で感じていた、もどかしさ・むずがゆさを解消してくれた一冊です。
「はじめに」に本質と特徴が詰まっているので引用します。
長年ファッションの仕事をしていても、
いまなお素材のことで知らないことが多く、
調べてもよくわからない・・・わかりにくい・・・
そういうジレンマを感じておりました。
以前、総合的なファッション用語辞典を編集・製作しましたが
一番苦労したのが「素材」です。
「今度は、自分が使いたい辞典を作りたい」
“テキスタイル用語辞典”はそういう思いで製作を始めました。
まずは素材がよくわかるカラー写真がたくさんあること。
自分が理解できる解説に噛み砕くこと。
時にはマニアックな内容も差し込み、面白く。
(以下、略)
「自分が使いたい辞典を作りたい」の思いはそのまま
ほんとうにつかうひとの立場に立って、編集されているのを感じます。
WEBでいろいろなことが無料で、調べられる時代だからこそ
買うべき価値がある本だと思います。
「テキスタイル用語辞典」(成田典子 著) 本の解説ページ(この解説もわかりやすくていいです)