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もしもミシンが使えたら

もしもミシンが使えたら。。。#012 シャツの縫製(工程9:裾の始末&工程10:ボタンホール・つけ)

工程9)裾の始末


「なんかいいことでもあった?」

「う、うん。。。まあね」
不意を突かれた。感情が表に出るのを隠そうとしているところをズバリ突かれた。

「まあねっていうわりには、ニコニコだけど。。。」
シャツの感はするどい。

(めうちをつかってていねいに裾を仕上げるの図)

正直に言うと1週間が待ち遠しかった。
あれだけ会うのを避けてきた自分から誘うなんてできないけれど
いっそ「誘ってみた」的に、かるいノリでいってみたら
そんな以前の自分はなかったことになってたりしないかと
都合のいいことを妄想してみたり。。。

たしかに自分の中で何かが変わった。
おもしろそうなヤツだと思っていたけど
最初はなかなかコミュニケーションがとれなくて
自分は上手くやっていけるだろうかと思ってみたり
ビジネスライクな関係もありなんじゃないかとか。。。

 

工程10)ボタンホールをかがる&ボタンをつける

思い返せば、久しぶりに会って
開き直って素直に向き合ったのがよかったのかもしれない。
「むずかしいところがあるんじゃないか」と疑ったり
「もし失敗したらどうしよう」なんて不安がったり。。。

いつの間にか、おじさんと呼ばれても否定できない年齢になって
無意識に自分のフィールドを内へ内へ狭めてきていたのかもしれない。
「自転車は膝に負担が少ない運動」という触れ込みに反応してしまう自分に
違和感を覚えなくなって久しい。「自転車=移動手段」だったのに。。。
週に1回、いや月に2回ぐらい、夢中になれる時間、悪くないなぁ。。。

「おい、聞いてんのか?」
シャツの声で我に返る。

「ごめん、よく聞こえなかった。もう1回」

「だから、できあがったの!」
シャツは声を荒げた。
そして、元気なく続けた。
「 あとは。。。あとは。。。ボタンをつけて。。。終わちゃったのかなぁ、俺たち。。。」

「馬鹿野郎、まだ始まっちゃいねーよ」
そう言い残して僕はボタンを買いに出た。

(おわり)

 

 

(ボタンホールをかがるのはコンピュータミシンにお任せしますの図)

 

 

年末に間に合いました。

男38歳。自作のシャツに袖を通す。。。


 

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